2013年01月15日
都市伝説:ノックの音がする
A子と彼氏のB男、友人で同じくカップルのC子とD男、この四人は大学の卒業旅行に登山を計画していた。
四人は全員が同じサークルに所属していて、入学当初から親しかった。
初日は車で山小屋にまで行き、そこで一泊してから登山をする、そういう計画だった。
全員揃って行きたかったのだが、彼氏のB男は就職活動の面接があり、一人遅れて、バイクで山小屋に行くことになった。
A子はD男の運転する車の後部座席に座り、前の席にはC子とD男が座って、順調に山道を登っていった。
山の中は、先日の雨の影響か、ひやりとしており、少し靄がかっていた。
最初の内は、二人と話をして盛り上がっていたA子だったが、ウトウトしているうちに眠ってしまった。
目を覚ますと、もう山小屋の近くだった。
随分眠ってたみたい、とA子は思った。
気だるい身体を起こして、車を出る。
ひんやりとした空気を吸い、靄がかった山を見渡すと、C子とD男が真剣な顔をして、小さな声で話している。
「どうしたの?」
はっと振り返ると、二人は黙って目を合わせた。
異常な雰囲気の沈黙に、山小屋の鍵でも忘れてしまったのだろうかと、A子はもう一度二人に問いかけた。
「ねえ、何かあった?」
二人は互いを見合っていたが、やがて頷き合った。
「A子、落ち着いて聞いてね」
「実はな。さっき警察から、連絡があったんだ。バイクで途中まで来ていたB男が、山道から落ちて、死んだって」
「そんな……」
A子は絶句し、その場にへたり込んだ。
山小屋に入っても、A子は茫然自失で、ショックを受けたまま、ひとりひざをかかえてふさぎこんでいた。
その内に、夜になった。
突然、静かだった山小屋のドアが、乱暴にノックされた。
「おい! A子、俺だ! あけてくれ!」
B男の声だ! A子はすぐさま開けようとしたが、C子とD男はA子の手を掴み、ひきとめた。
「だめだ、A子、B男は死んでいるんだぞ! きっと幽霊だ! 君を連れて行こうとしているんだ! ドアを開けちゃだめだ!」
「そうよA子、私たちと一緒にいて!」
二人は、強い口調でA子を諭した。
しかし、ノックの音はさらに続いた。
「A子あけてくれ、たのむ! そこにいるんだろ? 開けてくれ、お願いだ!」
B男の必死の声が聞こえる。
B男を見たい、もう一度会いたい。
矢も盾もたまらず、一心にそう思ったA子は、二人の制止を振り払って、ドアを開けた。
彼の待っているそのドアを。
まっさきに飛び込んできたのは、白い天井だった。
それから、目を赤く腫らしたB男の顔が見えた。
「A子……本当によかった……」
B男はそういって、A子の手をとり、両手で握り締めた。
わけのわからないでいるA子に、B男は事情を説明し始めた。
事故にあったのは、A子とC子とD男の方で、崖から転落して、後部座席から投げ出されたA子は、一晩中生死の境をさまよっていたという。
「C子とD男は死んだ。即死だってさ」
震えるA子を抱きしめると、B男はぽつりといった。
「あいつらも、二人だけで逝くのはさびしかったんだろうな。お前にも、一緒にいてほしかったんだろう」
これが都市伝説、ノックの音がする、です。
とにかくこの話は出来が秀逸で、お話として完成度がMAXですね。
世にも奇妙な物語で放送されたり、多くの漫画媒体で読み切りが書かれたり、何せ元のお話の出来がいいので、人気が高い都市伝説です。
また、この世とあの世の狭間、幽霊の話というのも、日本人にとっては馴染みの深いものであったのかもしれません。
四人は全員が同じサークルに所属していて、入学当初から親しかった。
初日は車で山小屋にまで行き、そこで一泊してから登山をする、そういう計画だった。
全員揃って行きたかったのだが、彼氏のB男は就職活動の面接があり、一人遅れて、バイクで山小屋に行くことになった。
A子はD男の運転する車の後部座席に座り、前の席にはC子とD男が座って、順調に山道を登っていった。
山の中は、先日の雨の影響か、ひやりとしており、少し靄がかっていた。
最初の内は、二人と話をして盛り上がっていたA子だったが、ウトウトしているうちに眠ってしまった。
目を覚ますと、もう山小屋の近くだった。
随分眠ってたみたい、とA子は思った。
気だるい身体を起こして、車を出る。
ひんやりとした空気を吸い、靄がかった山を見渡すと、C子とD男が真剣な顔をして、小さな声で話している。
「どうしたの?」
はっと振り返ると、二人は黙って目を合わせた。
異常な雰囲気の沈黙に、山小屋の鍵でも忘れてしまったのだろうかと、A子はもう一度二人に問いかけた。
「ねえ、何かあった?」
二人は互いを見合っていたが、やがて頷き合った。
「A子、落ち着いて聞いてね」
「実はな。さっき警察から、連絡があったんだ。バイクで途中まで来ていたB男が、山道から落ちて、死んだって」
「そんな……」
A子は絶句し、その場にへたり込んだ。
山小屋に入っても、A子は茫然自失で、ショックを受けたまま、ひとりひざをかかえてふさぎこんでいた。
その内に、夜になった。
突然、静かだった山小屋のドアが、乱暴にノックされた。
「おい! A子、俺だ! あけてくれ!」
B男の声だ! A子はすぐさま開けようとしたが、C子とD男はA子の手を掴み、ひきとめた。
「だめだ、A子、B男は死んでいるんだぞ! きっと幽霊だ! 君を連れて行こうとしているんだ! ドアを開けちゃだめだ!」
「そうよA子、私たちと一緒にいて!」
二人は、強い口調でA子を諭した。
しかし、ノックの音はさらに続いた。
「A子あけてくれ、たのむ! そこにいるんだろ? 開けてくれ、お願いだ!」
B男の必死の声が聞こえる。
B男を見たい、もう一度会いたい。
矢も盾もたまらず、一心にそう思ったA子は、二人の制止を振り払って、ドアを開けた。
彼の待っているそのドアを。
まっさきに飛び込んできたのは、白い天井だった。
それから、目を赤く腫らしたB男の顔が見えた。
「A子……本当によかった……」
B男はそういって、A子の手をとり、両手で握り締めた。
わけのわからないでいるA子に、B男は事情を説明し始めた。
事故にあったのは、A子とC子とD男の方で、崖から転落して、後部座席から投げ出されたA子は、一晩中生死の境をさまよっていたという。
「C子とD男は死んだ。即死だってさ」
震えるA子を抱きしめると、B男はぽつりといった。
「あいつらも、二人だけで逝くのはさびしかったんだろうな。お前にも、一緒にいてほしかったんだろう」
これが都市伝説、ノックの音がする、です。
とにかくこの話は出来が秀逸で、お話として完成度がMAXですね。
世にも奇妙な物語で放送されたり、多くの漫画媒体で読み切りが書かれたり、何せ元のお話の出来がいいので、人気が高い都市伝説です。
また、この世とあの世の狭間、幽霊の話というのも、日本人にとっては馴染みの深いものであったのかもしれません。