はさみでちょっきん都市伝説

　1960年代に、『幸福の手紙』というものが世間に流布しました。
　不幸の手紙のルーツは、この幸福の手紙とされているのです。
　内容は、以下の通りになります。

「　日以内にこの手紙と同じ内容の手紙を　人に送ってください。もし送らなかった場合は、幸運を逃すことになります」

　こういった内容の手紙でしたが、1970年代に入って、『幸福の手紙』から『不幸の手紙』へと形を変えました。
　その内容は、以下のようなものです。

「　日以内にこの手紙と同じ内容の手紙を　人に送ってください。もし送らなかった場合、あなたは不幸になります」

　また、この後に、「わたしの友人は手紙を出さなかっために、　といった不幸にあいました」という具体的な内容を書き添えるものもありました。

　
　1960年代に流布され始めた「幸福の手紙」はそれほど広がりを見せませんでしたが、不幸の手紙は爆発的に全国に広がりました。
　「幸運を逃す」という消極的な内容に比べて、「不幸になる」という内容が、人々に不快感と疑念を植えつけたのです。
　まさかそんな事はないと思っていても、手紙を受け取った人間の心の片隅には、不安が残るものです。
　また、その不安を嫌な相手に押し付けよう、という気持ちも生まれるものでしょう。
　
　手紙にはなぜ不幸になるのか、どういった不幸が待ち受けているのか、それは一切書かれていません。
　それが一種のこじつけ効果を生み、不幸の手紙のせいであると決め付けた事象が次々起こり、余計に漠然とした不安と恐怖心を人々に抱かせることになったのです。
　
　少しの手間で不幸を避けることが出来るなら……そう考えた人々は、次々に不幸の手紙を送り出し、その数は鼠算的に増え、社会現象とまでなってしまったです。